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#私の介護

澤田智洋

世界ゆるスポーツ協会代表理事

Tomohiro Sawada
World Yuru Sports Association Chairperson

澤田智洋

介護とは、
未来のリハーサル。

澤田さんの専門は言葉とスポーツと福祉。コピーライターの肩書を持ちながら、多方面で活躍する中、提唱しているのがマイノリティデザインだ。それは誰にでもあるちっぽけな弱さや、何かに対して苦手だと感じる気持ちを、克服するのではなく生かすことで、社会を変えていこうという考え方。視覚に障害を持つ息子や、福祉の世界にいる人たちが、もたらしてくれた気づきが原点になっている。

2015年、澤田さんは「世界ゆるスポーツ協会」を設立した。ミッションは、『スポーツ弱者を世界からなくす』。障害を持つ人や高齢者など、スポーツに対してマイノリティな人たちが、ゆるく楽しめるスポーツを開発している。「人には多面性がありますが、今の社会では仕事をする上での肩書であるA面やB面以外は余計なものとして切り捨てられます。本来それは人が持っている〈味〉の部分。僕自身、以前はクリエイターとしてのA面しか見ていませんでした。福祉の世界に飛び込んでA面以外を探してみたら、運動音痴という、引き出しの奥の奥にしまってあったX面を発掘しました。じゃあ自分の中のA面とX面をセルフタイアップしたらどうだろう。そこから生まれたのがゆるスポです」。

例えば「トントンボイス相撲」は、トントンと声を出すと、その音に合わせてステージが振動し、紙の相撲力士を動かすことができる。体は不自由だけれど、おしゃべりが大好きなおばあちゃんを起点に、ノドの機能低下を予防するためのリハビリゆるスポーツとして開発された。現在は製品化され企業や幼稚園、医療機関など、幅広い分野と世代に普及している。「福祉の歴史を紐解くと、障害を持つ人を起点に発明され、結果的には、みんなにとって便利になった事例がたくさんあります。グラハム・ベルが難聴の母のために、スピーカー装置として開発したと言われている電話もそうですよね。福祉の世界から学べることの多くは、福祉以外の領域にも応用できるんです」。

澤田さんは、介護や福祉の仕事に未来をけん引できる力を感じている。「明治維新以降、人間味あるいは、人間が持つ雑味みたいなものが失われました。つまりデコボコした部分は邪魔なものとして扱われ、早い、強いという能力だけが大事にされています。でも介護や福祉の現場はそうではありません。一人一人を観察して、しかるべき対話やサービスを提供しています。〈味〉が大事にされているんですね。僕はそこに希望を見出しています。社会は人間をジャンル分けや記号化しているのに、介護従事者のみなさんは人間を一人の人間として扱っている。とても未来的な世界が、日本の社会全体にも浸透していくと信じています」。

※A面・B面・X面…人が持っている多面性について、アルファベットと多面性の〈面〉を組み合わせて表現しています。

澤田智洋/1981年生まれ。言葉とスポーツと福祉が専門。2004年、広告代理店入社。2015年、だれもが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。

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